過払い利息返還訴訟の動きその2

過払利息返還訴訟の動きが多く出てくるようになった理由のもう一つが、司法書士も簡易裁判所の金銭請求の訴訟などについて、代理人として訴訟を担当できるようになったことから、司法書士もがこの過払い金返還請求訴訟に注力していることです。
また同時に弁護士についても、法曹人口を諸外国並に増やしていく、という方針から最近は若い弁護士が急速に増加し、この種の事件を担当していることも影響しているものと思われます。
利息の過払い請求で戻ってくるお金は、利息を支払い続けた期間、借り入れていた金額、その利率などによりそれぞれ違ってきます。ある事例においては、10年近く金利を支払い続けた人が、ある大手の消費者金融業者から百数十万円もの過払い金を返却してもらったということもありました。
一方、消費者金融業者の中には、高金利で貸すことができなくなって、かつ、利息の過払い請求を受け、これに応じなければならなくなったことから、経営が成り立たなくなって業務を閉鎖した業者があったり、経営が厳しいと噂される業者も出てきています。最大手の武富士が破綻したのも記憶にあたらしいですね。

過払い利息返還訴訟の動きその1

長年消費者金融業者に法定利率(利息制限法で定めている利率)を超える利息を払い続けていた借主が、今盛んに過払利息返還の訴訟を提起するようになりました。この大きな理由のうちのまず第一についてお話します。
一つ目の理由は、消費者金融業者に取引履歴の開示義務があることが明示されたことです。通常、長い期間に渡って利息を支払い続けてきた借主は、利息の支払いをした時に受け取っていたはずの領収証だとか、銀行送金をした控えの書類などを全部は残してはいません。このために、借主はいつ、幾らの利息を業者に支払ったのか、わからないのです。これがわからないのでは、利息の過払が生じているかどうか計算できませんから、過払い金の請求も、そのための訴訟も提起できません。ところが裁判所が消費者金融業者は借主から今までの貸し借り、利息の支払いなどの取引履歴を明示するように要求されたら、これを明らかにしなければならないと判断をしたのです。
このため、業者には取引履歴を開示する義務があり、にも関わらず資料がもう残っていないなどと言って開示に応じない業者は不利益に取り扱われることになったのです。この結果、大部分の消費者金融業者は取引履歴の開示に応じますので、利息制限法の利率を超える利息が幾ら元本に充当され、残元本が幾らに減額になったか、あるいは利息が過払の状態になっているかどうかなどを簡単に知ることができるようになったのです。

グレーゾーン金利

グレーゾーン金利の存在について、地方裁判所では早くから借主保護の動きがありましたが、最高裁判所でも平成11年ころから消費者金融業者の金利についての判断が明確に変わりました。裁判所が消費者(借主)を保護し、肥大化した消費者金融業者に厳しくなったのです。任意に金利を支払った、とされる要件が厳格になりました。その結果、借主が支払った利息制限法で定めている利率を超える利息については、任意の支払いであるとはほとんど認められなくなり、元本の支払いに充てられたとみなされるようになったのです。すでに元本の返済が終わっているものについては、この支払い過ぎた利息を過払い金として返還請求できることが認められたのです。
このように昨今の流れを説明すると、簡単に消費者(借主)保護の時代が実現されたかのように思われるかもしれませんが、消費者金融業者側もあらゆる論理を駆使して抵抗し、裁判所も幾つもの裁判例を積み重ねて、ようやく弱い立場の消費者を、儲け主義第一の金融業者から守る体制が確立したのです。
その結果、法律も改正を重ねて、グレーゾーン金利はほとんどなくなるなど、消費者保護がはっきりと打ち出されてきています。

かつて消費者金融が花盛りという時代がありました

金銭消費貸借契約における金利は、利息制限法で一定利率以下でなければならないと規定されていますが、借り主がその利率以上で借りることを承諾し、その利息を任意に払った場合、それは有効であると考えられていた時期がありました。お金に困った人は、少々高金利であってもなんとかなる、それよりも今日の返済だ、と安易に考え、または追い詰められてついその場しのぎでお金を借りたのです。
金銭貸借の利率についての法律は利息制限法のほかに出資法があって、出資法に定める利率を超えると処罰されることになっています。この処罰の対象にならない利率ギリギリで貸し付けをしていたのが消費者金融業者で、こうした利息制限法の規定を超える利率だけど処罰の対象にならない範囲の金利はグレーゾーン金利と呼ばれ、社会問題化したのです。
少し考えてみてもらいたいのですが、仮に50万円ずつを6つの業者から借りたとすると、借金の合計は300万円ですが、利率が全部月に2.5%だったとしても、1ヶ月に支払わないといけない金利だけで7万5千円になります。この金額は通常の会社員の給料からすると決して小さな額ではないはずです。しかもこれを払っても、元本の300万円は一切減らないのです。結局、長い間に金利が支払えなくなったり、生活費が足りなくなって、さらに消費者金融業者から借り入れをする結果となり、雪だるま式に借金が増えていくのです。そんな時代には消費者金融業者が借入金の返済を滞った人に対して次々と取立訴訟を提起したので各地の簡易裁判所はそれらの訴訟であふれていました。借金地獄に陥った人たちの悲劇が報道されたりもしたのです。
しかし、これらの借金地獄に陥った人たちも自分から破産の申立をして消費者金融業者からの請求を免れるという防衛手段を行使するようになりました。このため今度は各地の地方裁判所が自己破産申立事件であふれる結果となりました。自己破産事件が多すぎるために、本来は免責決定を出す前に裁判官が一人ひとりの破産者に会って事情を聞くという審尋を行うことが原則であったのに、これができなくなりました。そのため窮余の策として考えだされたのが、短時間に流れ作業のように大勢の審尋をするとか、多人数を一室に集めてグループ審尋をするということでした。

自己破産デメリット.net

債務整理の依頼者と受任者での意識の乖離

債務整理の問題は、その依頼者にとっては、それまでの間、何ヶ月も、場合によっては何年間にも渡ってどうしたら良いのか、日々悩み続けてきた問題であることは容易に想像がつきます。また、たとえ長期間に渡って悩んでいたとしても、その問題を専門家とはいえ、赤の他人に洗いざらい全て打ち明けて相談をする、というのは、誰しもが抵抗感を持つことではないかと思います。特に日本人は借金をすることは「恥」であるという意識が刷り込まれているように思いますし、その「恥」を他人に晒すことはもっと大きな「恥」であると考えられてきた風潮があるように思います。
ましてや、こうした債務整理の問題の相談先となるのは弁護士事務所の弁護士先生となるわけで、通常は町中の立派なビルの中に事務所を構えていて、入り口からして入りづらい雰囲気満載の事務所であることが多いのが弁護士事務所というものです。せっかく一大決心をして、相談するために事務所の前にまで来たのに、「やっぱりムリ!」とその場で尻込みしてしまい、帰ってしまった、というような話しも聞きます。
そもそも、弁護士の助けを借りたいと思うことは、何らかのトラブルがあって、自分ひとりでは解決できないから、専門家に助けてもらいたくて、相談をするわけですから、そういう依頼者側の心理というものをもう少し考慮したほうがいいと思うのは私だけではないのではないでしょうか。
さて、そんな依頼者の心理状況に対して、相談を受ける側である弁護士事務所の対応は入り口の入りにくさだけではなく、様々な点で依頼者側の意識とはかけ離れているいことが多いのではないでしょうか。特に、債務性案件については、依頼者は通常借金の返済に困窮している債務者であり、当然のことですが、お金に困っているのです。そのため、相談を受ける弁護士側としても、お金の無いひとからどんなに頑張っても、多くの報酬を得ることは難しいのは自明の理です。従って、債務整理案件というのは、弁護士側からすると、「単価の低い案件」ということになってしまうのです。しかし一方で債務整理案件には裁判で争点となる部分が比較的少なくて、基本的には事務作業さえしっかり行っていけば、報酬に結びつくという、難易度の低い案件でもあります。

そこにバブル崩壊後の不景気とさらにはグレーゾーン金利の撤廃による「過払い金返還バブル」という現象が重なって、弁護士事務所には時ならぬ過払い金返還請求の依頼者の行列ができたのです。弁護士事務所側でも、「債務整理専門」「過払い金に特化」といった弁護士事務所も数多く出てきて、こうした事務所が債務整理案件を「ビジネス」として捉えて収益を最大化していきました。近年では過払い金バブル下火になってきて、一時多額の報酬で売上が絶好調だった弁護士事務所も今では苦しい台所事情を抱えているようです。
しかし、債務整理案件をビジネスとして捉え、金儲けに走っていった弁護士事務所にはそもそも冒頭に記したような依頼者側の心情や悩みについて真剣に対応しているとは思えません。方や、人生をかけて、重大な決心のもと、勇気を振り絞って弁護士事務所のドアをノックしてきた依頼者に対し、事務所側は「お客さんが来た!」とばかり、報酬金額をソロバンではじいているような状態では依頼者の要求に本当に応えたことにはならないのは当然です。最近では少し減ったようなのですが、それでも電車の車内広告には数多くの弁護士事務所が債務整理案件の広告を出していますし、インターネット広告もまだまだ盛んに掲載されている状況です。そんな広告の宣伝文句に躍らされること無く、どれだけ真剣に、親身に相談にのってくれるかどうかが、債務整理の相談先の選択として最初に考えるべきことだと思います。